テスター(マルチメーター)の使い方 TOP
【注意】本ページはあくまでエレキギターの部品チェックについて書いたものです。100Vコンセントで動く電気機器の、通電状態での測定(電圧、電流等)は、感電して死に至る恐れがありますので本ページには記載していません。特に電流(単位:アンペア)測定はテスターを直列つなぎするため、大電流がテスター内を突き抜け爆発、発火、停電等の恐れがあります。万一事故を起こされても私(35Guitar管理人)への責任追及はご容赦下さい。 |
本サイトは元々40歳前後のおとーさんを対象に立上げましたが、最近ヤング(死語)からの問い合わせも増えています。その多くは「PUを交換したら音が出なくなりました。どうすればいいでしょうか」と「ハムバッキングPUを交換したいのですが何色をどこに繋げばいいのか判りません」の2つです。Q&Aを繰り返すうちに、質問者さんのほぼ100%がテスターを持たずに(・・ていうかその存在すら知らずに)果敢に改造に挑戦されていることがわかりました。 その勇気は称賛しますが、テスターなしにエレキの配線をするのは無謀ですし、何よりも改造の楽しみが半減します。目に見えない電気を見えるようにしてくれるのがテスターなのです。ハンダ付け不良やスイッチの接触不良、ピックアップ断線は目視では殆どわかりませんが、テスターなら一発です。それにテスターは(エレキの配線チェック用なら)1,000円程度で必要十分な性能があります。 ・・というわけで、「ヤングのためのテスターの使用法」について説明します。もちろんおとーさん世代の人もどうぞお楽しみ下さい。 |
写真1 アナログテスターとデジタルテスター(マルチメーター) |
とりあえず私が使うテスターをご紹介(写真1)。左はアナログ(秋葉原の秋月電子で1,000円しなかった)、右はデジタル(業者からの貰い物なので値段不明)です。デジタルの方が操作が楽で読み違いも少ないのですが、アナログはピックアップの位相確認が出来る大きなメリットがあります。尚、見栄張って高級品を買うと、大きく重く丈夫なのでエレキのトップに落して傷を付ける恐れがあります(苦笑)。 |
写真2 アナログテスター |
とりあえず今回はエレキの配線チェックに便利なアナログを紹介します。1,000円程度のヤツで必要十分です。テスターには2本(赤と黒)のプローブが付いています。これを測定対象(接点、電線)に当てて測定します(写真2)。 |
写真3 アナログテスター設定 |
テスターは、1台で電圧(単位:ボルト)、電流(単位:アンペア)、抵抗(単位:オーム)等といった電気の特性を示す様々な値を測定できますが、エレキの配線チェックの場合、使うのはほとんど「抵抗」のみです(写真3)。 |
写真4 0オーム確認 |
まずプローブ同士を接触させて、針が右端(0オーム)を差すことを確認します(写真4)。 |
写真5 スイッチの動作確認 |
スイッチの動作確認をします(写真5)。端子にプローブを当て(赤黒どちらでもよい)、スイッチオンのとき針が0オームを指せば正常です。この応用として、身元不明のストラト用レバースイッチの接点確認(レバー位置がどこのとき、どの接点が導通するかの調査)もできます。 |
写真6 POT(ポテンショメータ、ボリューム)の動作確認 |
POTの動作確認法です(写真6)。POTは3個接点がありますが、中間の端子にプローブを1本当て、両端の端子のどちらか1方にもう一本のプローブを当て、POTのシャフトを廻して抵抗値が変わることを確認します。例えばストラト用POTの場合、抵抗値が0から250キロオームの範囲で滑らかに変化することを確認します。POTの両端の端子間の抵抗値は固定です。 |
写真7 ピックアップの確認(シングルコイル) |
ピックアップの断線チェックと位相チェックも抵抗の測定で代用できます(写真7)。ピックアップは言わば小さな発電機であり、「抵抗」でその性能を判断するのはちょっと変なのですが、髪の毛より細い銅線を用いることにより銅線の長さに比例した電気抵抗が(言わばコイルの副産物として)発生するので、これを測定することでピックアップの出力(巻き数に比例する)を評価できます。エレキギターのピックアップの場合、3〜14キロオームです(個人的経験)。コイルが断線すれば抵抗が無限大になるので、針が左端を指します。 |
写真8 ピックアップの確認(ハムバッキング) |
問題はハムバッキングです。多いものは出力の電線が5本あります(写真8)。これではどこの何を計っているのかわかりません(苦笑)。 |
図1 古典的なハムバッキングPU(PAF等) |
ここでハムバッキングPUのおさらいです。磁極と巻き方向の異なるシングルコイルを直列に繋いだ構造です(詳細はこちら。)図1は本家ギブソンPAFの構造です(念のためポールピースのネジとバーマグネットを表現しておきました)。内部で配線処理されているため、外部には1本の電線(+シールドの網線)しかありません。単芯とかシングルコンダクターと言われるものです。 |
図2 多芯ハムバッキングPUの例(4芯と3芯) |
しかし最近は配線を内部処理をせず、表に出しているものも多いです(図2)。ダンカンやディマジオは4芯が一般的ですが、タップを1本にまとめた3芯もあります。いろいろお遊びができる反面、色使いや本数がメーカーによってバラバラで混乱の元になっています。有名メーカー品であれば既知なので(ダンカン、ディマジオについてはこちら)良いのですが、そうでない場合は大変です。 |
図3 身元不明ハムバッキングピックアップの出力電線チェック法 |
写真9 ピックアップの位相確認(鉄製ドライバーを近づけて離す) |
しかし図3、写真9のように、抵抗を測定しながらピックアップのポールピースに鉄のドライバーを当てて急に離したときの針のわずかな振れ方向で、ボビンの特定と位相のチェックができるので、メーカー・型式不明のハムバッキングピックアップでも出力電線の特定ができます。 このゼブラ色のハムバッキングピックアップの場合、テスターの赤プローブを出力電線の赤に繋ぎ、黒プローブをPUの出力電線の白に繋いだ場合、白いボビンにドライバーを当て急に離した際に針が左にちょっと動きました(4キロオームが一瞬4.5キロオームに)。テスターの赤プローブをPUの出力電線の黒に繋ぎ、黒プローブをPUの出力電線の緑に繋いだ場合、黒いボビンにドライバーを当て急に離した際も針が左にちょっと動きました。つまり白いボビンの出力電線は赤と白であり、黒いボビンの出力電線は黒と緑であることがわかります。またこのPUを通常のハムバッキングPUとして使用する場合、緑をコールド、赤をホットとして白と黒を短絡(ショート)させればよいことがわかります。 【補足(オタクな人だけお読み下さい)】 ドライバーで針が振れる理由を補足します。テスターで抵抗を測定する際、測定対象に微小な電流を流してその大小で抵抗値を計っていますが、コイルにドライバーを近づけたり放したりすることで別途微小な電流が発生します。これにより電流が妨げられたり増長されたりするので、あたかも抵抗値が変わったかのように見えます。テスターを「抵抗」ではなく「電圧」や「電流」測定モードにしたら?とお思いでしょうが、テスターのアナログ針はゼロ点付近で動きが悪いので、「抵抗」で測定した方が針の動きが見やすいです。学校で真面目に電気を勉強しているとこのような発想は出てきません(笑)。私もリペアマンの人にネットで教わりました。 |
図4 身元不明ハムバッキングピックアップの出力電線チェック法(タップ付き3芯の場合) |
3芯(+専用アース)の場合は図4のような方法も併用します。タップはホット−コールド間の中間地点ですので抵抗値を測定すれば分かります。タップ以外の2本のどちらをホット、コールドにするかは基本的に自由です(組み合わせ使用する別ピックアップの位相に合わせます。もし一方の電線がベースプレート/カバーと導通していたら、そちらをコールドにします)。 |