ピックアップの巻き方向と磁極について
エレキギターの心臓部、ピックアップの配線法についてちょっと書いてみました。いろんな文献やサイトで勉強したのですが細かすぎて判りにくいものが多く、これらの丸写しではなく私なりに噛み砕いてなるべく簡単にしたつもりです(うちの女房も理解できました)。ご参考になれば幸いです。 ピックアップの原理(電磁誘導とかファラデーetc)は後回しとし、今回はピックアップの巻き線方向と磁極について話したいと思います。これがわかるとハムバッキングやハーフトーンがよくわかります(というかこれを知らずにこれらは語れません)。 |
まず上図【タイプ1】のコイルの図と波形を見て下さい。マグネットのS極を上にし、これにコイルを反時計方向に巻き、巻き始めを基準(ゼロ点)としたときの巻き終わりの出力波形(音信号とノイズ)をこのように仮定します。 もしマグネットの磁極を逆(N極を上)にすると【タイプ2】のように、信号が反転しノイズはそのままの波形になります。信号は磁極で反転しますがノイズはこれに依存しない為です。 次に【タイプ1】の巻き始め・巻き終わりを繋ぎかえると【タイプ3】のように信号もノイズも反転した波形になります。これはコイルを時計方向に巻いても同じものができます。 最後に【タイプ4】として、【タイプ2】の巻き始め・巻き終わりを繋ぎかえると、換言すれば【タイプ1】と逆巻き逆磁極にすると、信号波形は同じでノイズ信号が反転した波形になります。 |
ではこの【タイプ1】と【タイプ4】を上図のように直列に繋いだらどうなるでしょう。もうおわかりですね。理論上、信号が2倍、ノイズが相殺されてゼロになります。これがハムバッキングピックアップの原理です。でも理論通りに行かないのがエレキギターでして実際には信号は2倍にはなりませんしノイズもゼロになりません。巻き数が増えることにより音のキャラクターも変わってしまいます(インピーダンスが増え、高音域が劣化します。詳細は後日別途お話します)。そのためシングルコイルにも根強い人気があります。 その他の接続法の例として、【タイプ1】同士あるいは【タイプ1】と【タイプ4】を並列に繋ぐものがストラトのハーフトーンですね(さらに濃い話はこちら)。同じピックアップでも設置箇所が異なるとサウンドキャラクターも大きく異なるので、これも味のあるサウンドになります。 もし【タイプ1】と【タイプ3】を繋ぐとどうなるでしょう。理論上、信号もノイズも相殺されてゼロになりますが、実際は腰の抜けたような、でも味のある「変な」音が出ます。いわゆるフェイズアウトしたサウンドですね(略してフェイズサウンドと言う方もいますが、個人的には不適当な言い方だと思います)。昔流行したようですが、最近は少ないみたいです。 最後に重要な言葉を一つ。上記【タイプ1】と【タイプ4】の組合わせように信号波形が同じものを「位相が同じ」とか「同相」とか「in phase」といい、【タイプ1】と【タイプ2または3】の組合わせように信号波形が逆転しているものを「位相が逆」とか「逆相」とか「out of phase」と言います。 |