ルーター(トリマー)の使い方

ギター製作(特にエレキギター)において必須の電動工具はルーター(トリマー)だと思います。しかしながら日本ではあまりポピュラーで無い為か、あまり参考文献がありません。「ルーター」で検索してもコンピュータのルーターばかり出てきます。
エレキ1号機の製作において多用しましたが、慣れないため随分失敗をしましたし、身の危険を感じることもありました。その為、初心者なりに調べたこと、経験したことを元に、ルーター(トリマー)取り扱い上の注意点をまとめてみました。おとーさんの安全作業の為、少しでも参考になれば幸いです。

1)セッティング
 →言うまでも無いが、セッティング、メンテはコンセントを抜いた状態で行う。
 →コレットへのビットの挿入は浅過ぎず、但しコレットの奥に軸を完全に押し込むのではなく1〜2mm手前に固定する。切削時のセンターずれ防止の為。
 →1回に掘る深さはビット径の1/2まで。例えば3/8インチ(9.5mm)のビットの場合、4.8mm(以下)ずつ複数回に分けて掘っていく。
 →コレットチャックは非常に精密にできている為、6mm用と1/4インチ(6.35mm)用は僅か0.35mmの違いだが兼用できない。ギター製作に便利な米国製ビットを使う為には1/4インチ用コレットチャックが必要。
 
2)保護具、安全対策
 →保護眼鏡、マスク着用、袖の巻き込みに注意、手袋は着用しないのが一般的らしい(滑ったり手袋を巻き込む危険がある為)、電線コードは噛み込み切断しないよう左肩にかける。風呂場を使う場合、漏電/感電に細心の注意。
3)始動と停止
 →始動/停止時が一番アクシデントが多い。始動時はルーター本体を若干傾けてビットを浮かせた状態でスイッチオン(写真左)、高速回転が安定してから材に切り込む(写真右)。
  
停止時はモーターが完全に停止するまでルーターは持ち上げない。ビット径と殆ど同じ大きさの穴をルーターで空けるのは始動/停止時に噛み込みやすいので危険、穴の大きさによっては小さいビットも用意する。
4)インレイの凹み
 →これは比較的簡単、ドレメルが最適。
  
5)トラスロッドチャネル
 →一度に掘らない。ネック材をしっかり固定、ガイドの直線性を事前にしっかり確認。ルーターは左右に動かすより奥から手前に引くほうが操作しやすい。7号機の製作記録参照。
【後記】12号機以降はドレメルのフリーハンドでやってます。案外その方が楽です。
6)ボディの切り出し
 →予めのこぎりでラフに切り出したら、テンプレートを作成し、ガイドローラー付きビットで削る。テンプレートは10mm程度の厚みが望ましい(薄いとガイドローラーがテンプレートにかからない)。エレキギターのボディ厚は45mmが一般的な為、表裏から加工する必要があるが、テンプレートは位置ずれしやすい。そのため目地払いのビット(ガイドローラーが先端に付いている)を別途用意すると便利。
  
 →木目方向によっては激しいキックバックを受けることがある(左図の【ケース4】、右図ので囲んだ部分)。ここで一気に掘ろうとしたり、反時計方向にルーターをスライドさせたりすると材を大きく破損したり、ルーターがふっ飛ぶことがある。バインディングチャンネルを彫るときも同様の注意が必要。

7)ボディの厚み調整
 →常にどこかをガイドにしながら堀る。その結果、最後のガイド部分は掘れずに残ってしまうので注意。7号機の製作記録参照。
8)ピックアップキャビティ
 →ビットは大小(3/8インチ、1/2インチ)あれば小さい方(3/8インチ)を用意したほうがよい。大きいビットで無理やり小さい穴を空けると始動/停止時に噛み込んでアクシデントの元。またエッジが丸くなりすぎてハムバッキングピックアップが入らない。テンプレートはボディ切り出しと同様、厚い(10mm以上)ほうが作業が楽。
9)トレモロキャビティ
 →穴あけ位置はトレモロと現物合わせ。ウィルキンソンやFRTをノンフローティングで使う場合、特に位置決めに注意が必要。
10)コントロールキャビティ
 →レスポールのように厚ボディの場合、ルーターで掘れる深さに限界(35mm程度)があることに注意。材の接着前に彫れる所は彫っておく。
11)バインディングチャネル
 →トップが平らなうちにできるならやってしまう。ボディの切り出しと同様、木目との位置関係でキックバックしやすい箇所があることに注意。ビット自体にガイドローラーがあるものは微調整ができないが、緩む心配もなく便利でお勧め。6号機(Martinキット)の製作記録参照。
12)アーチトップの加工
 →予め等高線を引き階段状に削り、これをサンダーで削ると初心者でも楽。ルーターは周辺から中央に向かって掘る。最後は一番高い所が残る。5号機、8号機(センターブロック部)の製作記録参照。
  
13)アコギのダブテイル加工
 →超難関、いずれ勉強します。
【後記】
10号機、14号機、17号機は手彫りで作りました。強引ですね(苦笑)。

14)メンテナンス
→焦がしてしまったビットはスチールウールで磨く(ビットを送らず一箇所に留めたまま回転させると焦げ付く。ビットの強度も低下する)。
 
→POF400Aですが、調整ハンドルのネジがすぐ駄目になるので、その後ステンレスボルトとナットに交換して使ってます。
 
→ドレメルのコレットチャック(1/8インチ)ですが、購入後5年(製作本数約15本)で急に調子が悪くなった(いつの間にか深堀りするトラブル連発)ので更新しました。500円程度です。
 
しかしこうやって書いてみると、いかにルーターが万能工具であるか実感します。
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