セミアコの製作(通算8号機) 基本設計 TOP

1.セミアコとは
 「ソリッドボディにもう少し生の音を加えたい」というコンセンプトから1958年に誕生したのがセミアコの第一号、ギブソンES-335です。薄めのアコースティックボディのセンターにメイプルのブロックを走らせ、振動系を全てこれに搭載した構造です。更にダブルカッタウェイでハイポジションも弾きやすくしています。レス・ポールやフライングVと違い、こちらは当初から市場に受け入れられたそうです。ジャズ、フュージョン、ロックと幅広く使え、またバイオリンのような高級感があります。
2.セミアコの自作について
MARTIN KOCH著、Building Electric Guitarにちょっとだけセミアコの製作記事があります(実はこの本、PDF化されており電子ブック版もCD-ROMで販売されています。私はStewMacで購入しました。紙版はPDFをそのまま製本した感じで、写真がちょっと見づらく安っぽいです)。
セミアコは決して超高級ギターという訳ではありませんが、自作というのは殆ど聞いたことありません。その理由はアーチの付いたプレス合板を家庭で作るのが困難だからです。この文献の作例でも合板をプレスするのではなく、薄い合板(2mm)を力でねじ伏せて(?)アーチ状にする作法をとっています。
3.プレス合板の購入について
日本の弦楽器用材ベンダー最大手(唯一?)のアイチ木材加工(株)さんのサイトに、「フルアコ・セミアコ用合板 \3,000〜」というのがあり、早速問い合わせました。エピフォン・ジャパンのカジノ/リヴィエラの合板プレスを請け負っているそうで、同じものをテスト的に購入しました。皆さんご存知でしょうが、カジノはビートルズ(特にレノン)の使用で有名なギターで、ES-335の下位機種ES-330と同形モデルです(当時のエピフォンはギブソンの工場で作られていた)。弱めのカーリーメイプル(センター2P)を指定しましたが、2枚でたった\7,000でした。ヤマトのコレクト便(手数料\315、送料\740)で、割と簡易包装です。
カジノ用合板は5枚構成になっています。表裏、センターが0.6mm厚のメイプル、その間に1.5mm厚のラワンが計2枚サンドイッチされています。つまり構成的には殆どラワンな訳です。化粧板は0.6mmの薄板なので、トラ目バリバリでも値段は極端に上がらないそうです(ちなみ今回購入した商品は何故か裏面も美しいカーリーでした)。
余談ながら楽器屋で観察した本物ギブソンES-335は目測で、「カーリーメイプル0.8mm、ポプラ2.5mm、メイプル1.5mm」の3プライでした。ヤマハSA-2200は今回購入したカジノ用と全く同じ感じの5プライでした。
アーチはこんな感じです。表裏同じです。アーチ形状まで特注するのは高く付きますが、エピフォン・カジノと同じアーチ形状であれば今後も安価で製作可能ですね。
個人的にはグレッチのギターも作りたいのですが、カジノの方がカッタウェイの角が長いので兼用は難しそうです。
4.ボディ構築法の検討
入手したプレス合板とにらめっこし、ボディの構築法を以下のようにを検討し、再びアイチ木材加工さんにセンターブロック用の材、側板を注文しました。余談ですが、カジノにはセンターブロックがありません。
後から知ったのですが、ES-335のセンターブロックは下図のように3段式みたいです。上下2段はアーチ形状に合わせてカットした薄板を縦にスノコ状に張り合わせたもの。センターは”まな板”状です。自分は完全1ピースで製作するつもりでしたが、注文したセンターブロック材の高さを間違えた(50mmではなく60mm必要)こともあり、本物と同じ”スノコ方式”を採用することにしました。
これが別途手配したスノコ材です。今回は新木場の材木店「もくもく」で作ってもらいました。8mm厚のホワイトシカモアを11mm間隔でカットしたものです。本物ES-335はスプルースのようですが、割り箸みたいで安っぽいのでシカモアにしました。メイプルも在庫がありましたが、バーズアイとか高級品ばかりだったのでやめました。
5.側板、センターブロック材について
これが届いた側板とセンターブロック材です。カジノ用の側版は0.6mmメイプル/ラワン1.5mm/0.6mmの3プライでした。センターブロック材はソフトメイプルの完全1ピースでした。
曲げ側板は左右セットで\3,500、センターブロック材は\1,500、コレクト便の手数料\315、送料\740でした。
側板はすごく丁寧に曲げてあります。合板を曲げたのではなく、曲げながら合板にした形跡があります。芯材(ラワン)の木目方向は曲げを考慮した方向(写真で垂直方向)でした。やはり頼んで正解でした。自分に2.7mm合板を曲げるのは不可能です。
ちなみに曲げあり、無しの価格差は僅か500円でした。
6.ライニングについて
先の文献の作例よると、セミアコ用ライニング材は高さ10mmだそうで、アコギ用のライニング(14.3mm)ではちょっと高すぎと思い、StewMacにマンドリン用(9.5mm)を注文しました。写真の白っぽいライニングがそれです。バスウッドのようです。
でもその後、楽器屋で本物ES-335をチェックしたらアコギ用と同じようなサイズのライニングでした。当然、上下のライニングはかなり接近していました。
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